人と動物−野生へのロマンを映画にのせて
河 合 雅 雄
京都大学名誉教授
下の写真が撮られたのが1960年と知ったとき、大きな衝撃を受ける。
人と自然の共生、人と動物の共生、という言葉が今ことごとしく叫 ばれているが、ほんの少し前の日本はまさにこの通りであったことを、この写真は如実に示しているからだ。
ところが、このユートピアのような風景が、まるで魔法にかけられたようにあっという間に消え伏せてしまったという驚き!そして、大量生産、大量消費、大量廃棄を燃料にした高速の文明号に載せられて、われわれは今、滅びの道をひた走りに走らされているのではないか。
関係者の努力のお陰で、コウノトリの試験放鳥が実現した。野生化への第一歩を踏み出したのだ。これは世界に誇れる偉業であるとともに、環境問題に最高の解決策の一つを示すことになろう。コウノトリの舞う地域は、大地も水系も空気も清浄な環境であることをコウノトリが実証し、米、野菜、魚介類など全ての生産物が安全だという二十一世紀の農村のあり方について、一つのロマンにあふれたモデルを掲示することになった。
このコウノトリを素材にした映画ができるという。「森の学校」に次ぐ作品とあれば、子どもや家族、地域社会が
どう描かれるのか。コウノトリの里から世界に、心に響く映画を期待してやまない。
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